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ベレト enters the scene
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ギルベルト enters the scene
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ギルベルト
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ベレト殿、ここにいたのですか。 殿下が捜しておられました。
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ディミトリはどこに?
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ギルベルト
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件の捕虜……クレイマン子爵麾下の者の 尋問に、先に取り掛かっておられます。
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ギルベルト
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私とあなたにも立ち会ってほしいと 仰っていたのですが……
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ギルベルト
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一緒に来てもらえますか、 ベレト殿。
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ディミトリ
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……その妄言は看過できない。 それほど首を刎ね飛ばされたいか?
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捕虜
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……私は己の正義に従ったまで。 女神に誓って、嘘はございません。
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捕虜
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とにかく……あの惨劇の渦中にあっても、 パトリシア様だけはご無事だったはずです。
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捕虜
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あの方が乗られていた馬車には近づくなと、 あらかじめ指示されておりましたから……
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パトリシアは共犯者だった?
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ディミトリ
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……そんなことがあってたまるか。 何の得があって、継母上がそのような……
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ギルベルト
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パトリシア様は、何としてでも帝国に…… 夫と娘の元に、戻りたかったのでしょう。
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ディミトリ
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……ギルベルト。 お前まで、何を言い出す。
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ギルベルト
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この数節、帝国に寝返った諸侯を探り、 パトリシア様について調べておりました。
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ギルベルト
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コルネリアの言葉は正しかった。 ……やはり二人は、結託していたのです。
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ディミトリ
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馬鹿も休み休み言え。……帰りたかった? それだけの理由で、あんな惨劇を……
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ギルベルト
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無論、あの二人がすべてを仕組んだなどと 申し上げるつもりはございません。
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ギルベルト
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恐らく裏には、王政に反感を持つ貴族や、 王国の混乱を狙う何者か……
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ギルベルト
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帝国……そしてソロンやクロニエのような 者たちの思惑があったのでしょう。
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ディミトリ
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……継母上が彼らと手を結び、 あの事件を起こした……そう言いたいのか。
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ギルベルト
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これはあくまで、状況証拠からの推察です。 あの方の真意までは、私には……。
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ディミトリ
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………………。 ……今は、この男の話を聞くのが先だ。
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捕虜
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我が主は、急進的なランベール王のやり方に かねてより危機感を抱いていました。
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捕虜
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そんな折、何者かからダスカーの件に 加担するよう持ち掛けられ……
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捕虜
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私にとって、国を憂う主こそが正義だった。 我々は、己の正義に従ったまでです。
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ディミトリ
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……国を憂いて、虐殺に虐殺を重ねたと?
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ディミトリ
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王を弑逆し、兵を殺し、罪のない民衆を 巻き添えにしてまで、正義を語るのか。
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捕虜
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……その罪深さに耐えられなかったからこそ 私はこうしてここに立っているのです。
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捕虜
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……私は、そう信じております。
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捕虜
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いいえ。恨まれ、殺されるのも、本望です。 あれは……正義のための虐殺だった。
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ディミトリ
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………………。 ギルベルト。この男を牢に繋いでおけ。
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ギルベルト
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つまりは、殺さぬ……と?
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ディミトリ
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……それを決めるのは、この男の言う 正義とやらについて考えてからだ。
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ギルベルト
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……はい。
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ディミトリ enters the scene
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ベレト enters the scene
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ディミトリ
………………。
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大丈夫?
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ディミトリ
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いや、大丈夫……では、ないな。
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ディミトリ
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なあ……先生は、父親の……ジェラルト殿の ことを、どれだけ覚えている?
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ディミトリ
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……そうだよな。いなくなった者の姿は、 残された者の記憶から少しずつ消えていく。
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ディミトリ
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ならば、きっとすぐにわかる。いなくなった 者の姿を忘れていくことの恐ろしさが……。
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ディミトリ
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……正直、もう俺はよく思い出せない。 継母の……いや、あの人の、笑顔や声を。
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ディミトリ
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忘れてはならないと思っていたのに…… 思い出せるのは、寂しそうな顔だけだ。
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ディミトリ
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継母上は、父上や俺を……偽りの家族を 殺してまで、帰りたかったのだろうか。
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ディミトリ
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血の繋がった、本当の家族のところへ。
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ディミトリ
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……まあ、先生に聞いたところで、 そんなことはわからないよな。
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ディミトリ
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だが、もう……いいんだ。 憎悪に縋らなくても、俺は生きてゆける。
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ディミトリ
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死んでいった者たちを、本当に大切に 思うなら、真摯に償わねばならない。
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ディミトリ
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父上やグレン、死んでいった兵士たち。 迫害を受けて苦しむダスカーの人々……
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ディミトリ
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彼らのために、今の俺ができる贖罪は…… 託された王国を背負うこと、それだけだ。
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ディミトリ
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……ああ。だからこそ俺は、 エーデルガルトと会って話をしようと思う。
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ディミトリ
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突拍子もない話だと思うか? ……正直なところ、俺もそう思う。だが……
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ディミトリ
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俺は情も怨恨も、すべての過去を呑み込んで 彼女の描く未来について問わねばならない。
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ディミトリ
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彼女が覇業の果てに何を目指しているのか。 どんな正義を抱いて戦っているのか。
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ディミトリ
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……そして、なぜ戦争などという 手段を取らねばならなかったのか。
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ディミトリ
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今は……一国の王としてそれを問うのが、 俺に課せられた本当の責務だと思っている。
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でも、どうやって?
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ディミトリ
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……俺たちはこれから、 帝都アンヴァルへと軍を進めることになる。
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ディミトリ
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だが交戦する前に、いったん帝都から 離れたところに陣を構え、使者を出そう。
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ディミトリ
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互いに安全な場所で、武器を持たず、 兵も連れず、話がしたい……そう伝える。
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ディミトリ
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その申し出に応じてくれるかどうかは、 まあ……エーデルガルト次第だな。
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きっと応じてくれる
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ディミトリ
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……ああ。 そうと信じたい。
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ディミトリ
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なあ……先生。フェルディアで戦った時、 コルネリアは、俺を可哀想だ、と嘲笑った。
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ディミトリ
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だが、継母に愛されていなかったとしても 俺は自分を哀れだとは思わない。
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ディミトリ
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今は、仲間や、友人や…… お前が、側にいてくれるのだから。