ベレト & アッシュＢ / houses.fedatamine.com

	蒼月の章
受注可能:	After 女神再誕の儀

ベレト enters the scene

アッシュ enters the scene

あ、先生。ちょうどよかった。いつかの泥棒さんの話、しましたっけ？

泥棒さん？
聞いていない

ほら、街で出くわしたじゃないですか。露店から本を盗んでいった、あの人です。

あの後、僕は泥棒さんを追いかけて、無事に捕まえたんですけど……。

逃げられた？
お金を払ってもらえなかった？

あっ、ちゃんと捕まえましたよ。僕、足の速さには自信がありますからね！

……だけど、お金は貰わないことにしました。

……はい。払ってもらわなかったって言ったほうが、正しいかもしれませんね。

あはは、だから実を言うとあの後しばらく、お金がなくて大変だったんですよ。

……僕、あの人を捕まえて、どうして本を盗んだのか尋ねたんです。

高く売れそうだったから、って…… まとまったお金が欲しかったみたいです。

子供が病気になったみたいで、その薬代にしようと思ったらしくて。

騙されている
子供がいる年齢には見えなかったが

そ、それはそうかもしれませんけど……。

もし本当に病気の子供がいたのなら、取り返しのつかないことになっちゃうから。

人の命に比べたら、安いものですよ。 ……それに。

実を言うと、僕も昔、あの人と同じことをしていたので。

泥棒？

はい。……と言っても、もう何年も前の話ですけどね。

僕の親は病気で死んで、だけど弟や妹を食べさせてやらなきゃいけなくて……。

頑張って頑張って働いたんですけど、稼げるお金なんてほんのちょっとだけで。

それで……盗んだんです。街を歩く人から、兵士から、お店から。

弟たちの喜ぶ顔を見たら、僕も嬉しくて。何度も何度も繰り返して……。

想像できない
良いことではない

本当に後悔してます。今考えたら、本当に馬鹿だったなあって。

で……僕が９つになった頃だったかな。領主様の屋敷に、盗みに入ったんですよ。

貴重そうなものはたくさんあったけど、目についたのは高そうな装丁の本でした。

それが『ルーグと風の乙女』です。挿絵の騎士がかっこよくて、目が離せなくて……。

かっこいいから盗んだ？
なるほど

あはは、もちろんそれもありますけど…… 本って、すごく高価なものですから。

……で、本を盗んだ僕は、案の定その領主様に捕まっちゃって。

その領主様っていうのが…… ロナート様でした。

けど、ロナート様ったらすごいんですよ。何も聞かず、僕に本とお金をくれたんです。

字が読めないって言ったら、弟たちごと僕を屋敷に招き入れて、読み方を教えてくれた。

その真似事じゃないですけど…… 僕は、あの方みたいになりたいんです。

……僕が悪事を働いてきた分、たくさん良いことをして埋め合わせたい。

だから、出費はちょっと痛かったけど、あの泥棒さんのことは後悔してなくって……

本当にそれで良かった？
それは自己満足では？

先生……。もちろん僕だって、わかってるんです。

僕が少しお金を払ってあげたくらいで、あの人たちの暮らしが楽になる訳じゃない。

世界中の貧しい人たち全員を助けられるほどお金があるわけもないし……。

だからって、何もしないでいるなんて…… やっぱり、僕にはできません。

先生、僕は……僕は、どうすれば良かったんでしょうか？