ディミトリ & フェリクス Ｂ

フェリクス
おい……暇を持て余しているのだろう。 稽古に付き合え、猪。

ディミトリ
……何だ、フェリクス。俺とは、 言葉も交わしたくないんじゃないのか。

フェリクス
剣を交わしたくないと言った覚えはない。

ディミトリ
面倒な奴だな……。 ……ん、お前、剣を新調したのか。

ディミトリ
……！　いや、いやいや、待て。お前、 なぜそんな稀少なものを持っている……！

フェリクス
フン……。 やはり、貴様ならばわかるか。

フェリクス
ちょうど行商が良い品を並べていてな…… 鋼の剣の中に交じって売られていた。

ディミトリ
この分厚い刀身、独特な刃紋…… 間違いない、名匠ゾルタンの作だな！

フェリクス
やらんぞ。

ディミトリ
……目にできただけでも十分だ。 だが、頼む……試し切りくらいは……

フェリクス
阿呆が。お前は自分の馬鹿力を省みろ。 万一破損したらどうする！

ディミトリ
そんな迂闊な真似をするかっ！

フェリクス
俺はまだ覚えているぞ。お前が９つの頃、 剣を力任せに振ってへし折ったことを。

ディミトリ
そ……それは昔の話だろう。 流石にもう、あんな馬鹿をするものか。

フェリクス
フン、どうだかな。あの出来事は 長らくフラルダリウス家で語り草に……

フェリクス
………………。

ディミトリ
……どうした、フェリクス？

フェリクス
……クソッ。 何を言っているんだろうな、俺は。

フェリクス
とっくに死んだ奴の話をするとはな。 くだらん……。

フェリクス
お前の顔を見ていたら腹が立ってきた。 稽古は別の相手に頼む。

フェリクス
……チッ。 腹立たしい……。

ディミトリ
……何だったんだ、あいつは。