アッシュ & マリアンヌ Ｂ

アッシュ
……あれ？ そこにいるのは、マリアンヌ？

マリアンヌ
え……？

アッシュ
ひえっ……や、やあ、マリアンヌ！ 急に振り向くから、驚いちゃって。

アッシュ
君は今日もお祈りしてるんですね。でも、 何でわざわざそんな隅っこのほうで……？

アッシュ
君がそんなに俯いていたら、祈られる 女神様だって困っちゃうんじゃないですか。

マリアンヌ
……私の祈りは、懺悔ですから。

アッシュ
懺悔？ ……何の？

マリアンヌ
それは……私の、全部です……。

アッシュ
うーん、何もそんなに 後ろ向きにならなくっても……。

アッシュ
君は自分で言うほど、 駄目な人じゃないと思いますよ。

アッシュ
馬の世話だって僕より得意だし、 それから料理上手だし、優しいし……

マリアンヌ
それは……でも……。

アッシュ
……むしろ、本当に懺悔が必要なのは、 僕のほうだと思います。

アッシュ
下町で暮らしていた頃は、僕、貧乏で。 食うに困って、盗みを働いていたんです。

アッシュ
今は食事も毎日食べられているし、 何より、こうして楽しく生きてます。

アッシュ
君はエドマンド辺境伯のご息女でしょう？ 貴族なら、もっと自信を持ってくださいよ。

アッシュ
あ、そうだ、貴族と言えば、紋章ですよね！ 君にも、紋章があったりするんですか？

マリアンヌ
紋章は……その……。

アッシュ
あっ、やっぱりあるんですね？ すごい、すごいですよ、マリアンヌ！

マリアンヌ
すごくは、ないです……。

アッシュ
いえ、そう謙遜しないでください。 それって、１つの才能じゃないですか。

アッシュ
誰でも持てるものじゃない。 胸を張っていいと思いますよ！

アッシュ
もし僕に紋章があったら、弟たちに貧しい 思いをさせることもなかったのかなあ……

アッシュ
とにかく、君は自分の力に自信を持って。 もっと前向きに生きていきましょうよ！

マリアンヌ
……いいえ、違うんです。 本当に……こんな紋章、何の価値も……！

マリアンヌ
ごめんなさい……。

アッシュ
マリアンヌ！　はあ、まただ…… 僕って、上手くいかないなあ……