ローレンツ & ラファエル Ｂ

ラファエル
ああ……腹減ったあ……。 何か食いもん……んぉ！？

ローレンツ
君はまた腹を空かせているのか。 これでも食べて静かにしていてくれ。

ラファエル
それ、オデにくれんのか！？ でも……お前も訓練続きで腹減ってんだろ？

ローレンツ
空腹のせいで肝心な時に君の馬鹿力が 役に立たないようでは、皆が困るのだよ。

ローレンツ
それに僕は貴族だからね。目の前に空腹の 平民がいるなら、食糧を分け与えて当然だ。

ラファエル
じゃ、じゃあ遠慮なく貰うぞ？ うっほほー！　いっただっきまーす！！

ローレンツ
食べながら聞きたまえ。君はもう少し 貴族を敬う姿勢を学んだほうがいいぞ。

ローレンツ
貴族は平民を守り、平民は貴族を敬う。 それがこの世界の秩序というものなのだ。

ローレンツ
無論、学友である以上、身分の隔てなく 僕と付き合いたい気持ちもわかるが……

ラファエル
はぐっ、むぐっ、もぐもぐ。 ごくっ、ごくっ。は～、ごちそうさま！

ローレンツ
君……。 僕の話を聞いているのか？

ラファエル
あ、前に貰った高そうなお菓子、 妹に送ったら早速、手紙が来たんだ。

ラファエル
すげえ美味かったから礼を言っとけってよ。 ありがとな！

ローレンツ
それは重畳。 自分の好む菓子で喜ばれると気分がいい。

ローレンツ
が、礼には及ばないぞ。 あれは君への感謝の気持ちで贈ったものだ。

ローレンツ
君の話を聞いて以来、 食事に対する考え方を改めてね。

ローレンツ
確かに人を知るために食事は有効だったよ。 盟主になるために利用しない手はない。

ラファエル
だから言ったろ？ 飯はみんなで食ったほうが美味えって！

ローレンツ
……少しずれている気もするが。 まあいい。それで、君の腹は膨れたのか？

ラファエル
まったく足りねえけど、 どうにか訓練は続けられそうだ。

ラファエル
よし、オデもっと強くなって、 ローレンツくんを守ってやるからな！

ローレンツ
……やはり僕の話を 聞いていなかったようだな。

ローレンツ
なぜ貴族たる僕が平民に守られねばならん。 秩序に反した行いだ。慎みたまえ。

ラファエル
でも、オデ食いモン貰わなかったら、 訓練できずに戦場で死んでたかもしれねえ。

ラファエル
オデが死んじまって養えなくなったら、 故郷にいる妹も飢えて死んじまうだろ？

ラファエル
だから、ローレンツくんは、オデの妹も 守ってくれたってことになるわけだ！

ローレンツ
食べ物を少し分けただけだ。 そこまで恩義を感じてくれずとも……。

ラファエル
ローレンツくんは立派な貴族として、 妹やみんなを守ってくれてる。

ラファエル
なら、もっと強えオデがお前を守れば、 みーんな幸せだ！　だろ？

ローレンツ
……フッ。その理屈はよくわからないが、 君が強いのは事実だ。勝手にしたらいい。

ローレンツ
食事を共にして人物を知る……か。 君のことも少し理解できてきた気がするよ。

ローレンツ
大食いでお節介なだけじゃない、 守り、守られるに足る男だってことがね。