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ドゥドゥー
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……殿下。 背中の傷、まだ残っていたのですね。
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ドゥドゥー
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痛むようなことがあってはなりません。 薬を手配しなければ……
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ディミトリ
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いや、いい。深かったとはいえ 9年も前の傷だ、もう痛むこともない。
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ディミトリ
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それに、お前を庇って負った傷を、 消してしまうのも勿体ないからな。
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ディミトリ
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あの傷は誇りだ。……俺のような者にも 生き延びた価値があったのだと思える。
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ドゥドゥー
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殿下、そんな仰りようは……。
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ディミトリ
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ドゥドゥー、お前は俺に救われたと言うが、 あの日、俺もお前に救われたんだ。
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ディミトリ
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……誰も救えず、俺だけが生き延びて。 生きている価値も理由もないと思っていた。
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ディミトリ
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だが、俺はたった一人……お前を救えた。 それだけがずっと、俺の支えだった。
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ドゥドゥー
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あの日……剣を手にした兵士を前にして、 おれはここで死ぬのだと覚悟していました。
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ドゥドゥー
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ですから、突然現れたあなたが おれを庇ってくださった時には……
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ドゥドゥー
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……地獄の底にも救世主は現れるのだと、 心の底からそう思ったのです。
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ドゥドゥー
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そんなあなたに、おれは何も返せていない。 まだ恩を返しきれていない……!
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ディミトリ
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……馬鹿、今更何を言っている。 お前にはいろいろと助けられてきただろう。
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ディミトリ
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5年前、牢の中で斬首を待つだけだった俺を 救い出してくれたのは、他でもないお前だ。
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ドゥドゥー
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それは……臣下として、 当然のことをしただけです。
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ディミトリ
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なあ、ドゥドゥー……お前にとって、 俺は特別な存在なのかもしれない。
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ディミトリ
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だが、それは俺からしても同じことだ。 お前は俺のかけがえのない、大切な……
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ディミトリ
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……だから友人にはなれないなどと、 悲しいことを言わないでくれ、ドゥドゥー。
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ドゥドゥー
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………………。 ……そんな顔を、なさらないでください。
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ドゥドゥー
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あなたは約束してくださった。 ダスカーの血を誇れる国を作ってやる、と。
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ドゥドゥー
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あなたの築く王国では、ダスカーの民や フォドラの民、そういった区別もなく……
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ドゥドゥー
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何の気兼ねもなく、胸を張って、 あなたを友と呼べるのですか。
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ドゥドゥー
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……ディミトリ。
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ディミトリ
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ドゥドゥー……!
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ディミトリ
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ああ、何度だって呼ばせてやる。 どれほどの苦労を背負おうと、俺は……!
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ドゥドゥー
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……では、その日を迎えるために おれも力を尽くしましょう。
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ドゥドゥー
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……本当は、おれもずっと あなたと……友人になりたかった。
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ディミトリ
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そうか……そうだったのだな。 ……良かった。
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ドゥドゥー
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……ですがそれまで、あなたの御身に 万一のことがあってはなりません。
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ドゥドゥー
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良いですか、殿下。深夜に一人で 出歩かれる際には、必ずお声がけください。
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ドゥドゥー
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たとえ昼間であっても、 行き先や何をするか、誰と会うかは必ず……
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ディミトリ
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結局、この過保護ぶりのほうは どうにもならなかったな……。
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ディミトリ
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……まあ、それもいいか。